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文章屋Y.S.のよしなしごと日記、音楽映画書評など

タランティーノ新作「ジャンゴ 繋がれざる者」を見て(ネタバレ)

 待望のタランティーノ新作ということで、公開初日に観に行ってきました。簡単な感想を記そうと思いますが、そうしないと「面白かった」「クールだった」に終わってしまうのでネタバレあり。ご注意下さい。

 タランティーノお得意の「復讐もの」ですが、ジャンル的には「マカロニウエスタン」、設定は南北戦争二年前の南部アメリカですから、銃と、あとダイナマイトのアクションになります。

 タランティーノ映画はどれもそうですが、シーンの動と静の切り替えや、BGMの使い方だけで痺れさせてくれて、今回それは非常に洗練されたものになっています。キルビルのようなちょっとおちゃらけた感じは逆になくて、それが物足りないと、タランティーノファンなら思うかもしれないほど、洗練されています。

 流血や卑語の連発もあるこの作品を過度に残酷で下品だと考える人は、間違っています。タランティーノは悪ふざけなどやっていません。とても真摯に暴力を描いています。人間てのは、このぐらいのことはやってきたんだ、今もやってるんだってね。無論、軸はエンターテイメントでメッセージではないですが。

 脚本で今回うならされたのは、過去の伝説や文学作品の扱い方、それへのリスペクトです。

 「本物のジークフリートに出会えた」。クリストフ・ヴァルツ演じる、「何を考えているかわからない」ドクターシュルツの、感情を迸らせた言葉。

 また黒人系欧州人大作家デュマの「三銃士」主人公、ダルタニアンの名を冠した奴隷を犬に食わせて処刑し、しかもフランスかぶれのくせにろくに物語を知らなかったカルビン・キャンディ(ディカプリオ)をどうしても許せず、あのクールなシュルツが敵だらけの中でキャンディを撃ってしまい、「すまん、どうしても許せなかった」と言って死んでいくシーンが最高に印象的でした。

 過去作品でもそうですが、タランティーノは、一般に俗悪なものも含めて(むしろ大いに賞賛して)、映画をはじめとする先行創作物への愛とリスペクトを作品そのものや部分で表現しています。パルプフィクションは「やすっぽいギャング映画」への全幅の愛と俺(タランティーノ)だけが知っているクールさを描いたもの。イングロリアス・バスターズでは、戦争のプロパガンダの道具へと映画を貶めたナチスへの怒りを表現してみせました。

 ぼくがシュルツの死のシーンに、この映画で一番しびれたのは、ひねくれて爪楊枝で映画の隅をつついた結果ではないと思っています。物語や映画を冒瀆するやつは許せねえ、というタランティーノの魂が、このシュルツの怒りの表出のシーンに凝縮されているのです。
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「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」見てきました(ネタバレあり)

 僕は旧作がブームになった頃にお年頃だったにも関わらず、だいぶ後にレンタルDVDで過去作を見てはまったクチです。ですから様々なマニアックな論争についてはよく知らず、TVシリーズ全てとオリジナル映画二本、多くはない友人からの情報が全てで、自分なりに考えて作品の解釈をしてきました。
 アニメなんてごちゃごちゃ考えずに楽しめばいいんですが、この作品は作品の構想が奥深く、それを読み取ることも楽しみの一つとなっています。ただし作中だけでは結局、全ての謎を解決することなく、多くのことがわけがわからないまま終わっていまいました。
 多くの謎について、26話のTVと映画二本の情報だけから考えて、あるいは想像を加えて、「こういうことだろう」という解釈はほとんどできたのですが、二点ばかり矛盾を来さない解釈が不可能な点があり、そういうについて「エヴァ」世代、の友人にちょっと聞いてみたりしたんですが、誰も(僕が納得できる)答えは持っていませんでした。

 新作劇場版に期待したことの一つは、この謎の解明もしくは予算と制作期間の関係などで生じた矛盾(とくにTVシリーズ)の解消でした。

 ところが、新ヱヴァは一作目こそ相当程度原作に忠実で、シンジがやや気概のある典型的少年主人公タイプにシフトした程度だったものの、二作目からは様々な要素がオリジナルをからめながらも大きく変更され、全四作の二作目ラストにして、オリジナル(映画二本目)のクライマックスであるサードインパクトが発動してしまったのです。
 そして三作目は不完全に終わったサードインパクトの後の世界が描かれますので、もはや「オリジナルの謎の解明」といった期待には、この新劇場版は答えてくれないのだとはっきりしました。あとは漫画に期待するしかありませんね。


 Qの中で、僕がもっとも気にいった(相当シビれたと言ってもいいです)シーンは、渚カヲルとシンジのピアノ連弾のところ。ビジュアルもサウンドも美しく、鳥肌モノでした。いわゆる「腐った」視点からも、ファンを納得させるものだったのではないでしょうか。その活躍の場面がオリジナルに比べぐっと増えたカヲル君は、今回で消滅してしまったようで、もう出番がないのかと思うと残念です。

 新劇場版全体にも言え、今回もきわだった、僕にしてみれば「欠点」と思われる点は、アクションに尺が使われすぎて、人間を描くシーンが少なすぎることです。
 原作の大きな魅力は、多くは父や母、肉親との関係からくるトラウマにより、人間関係において様々な葛藤を見せるキャラクターの描写でした。それがあるからこそ、エヴァに乗ることへの葛藤、こだわりなどがぐっとくるわけです。例えばアスカは天才を作るために人工的に組み合わされたカップルの間に生まれ、精神を病んだ母親には娘と認識されなくなり、母は人形を娘だと思っている。その母の遺品の薄汚れた人形をいつも身近に起き、天才としての自分の存在意義はエヴァのパイロットであることにあり、乗れなくなった自分の価値を見いだせなくなるのです。新劇場版では人形は出てきますがアスカの過去への言及は全くありません。これでは、オリジナルのテレビシリーズを見ていない人は何が何だかわからないと思います。
 ミサトさんとシンジとの別れのシーンは、オリジナル劇場版の最大の見所で、演出も素晴らしく涙腺がゆるみました。でも新劇場版では今回極めて機械的なセリフを投げつけただけで、もう旧作のような感動的なシーンが見られる可能性はなくなりました。

 人が死ぬことや殺すことについて、強い感動やショックを引き起こすドラマは、必ず人間をしっかり描いています。そこをなおざりにしてアクションや映像美ばかりに凝っても、二時間近くの間に食傷気味になってしまい、パーツパーツの映像や音楽や演出のよさが後半に行くほど死んでいくと思います。人は爆発を見に映画館になど行かないのです。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」は、その罠にはまったところが最大の弱点だと思います。

 それでも僕はブルーレイ買います。カヲルとシンジのシーンのためだけにもね。





 気がついたことがあったらまた加筆修正します。

 
 

探偵はBARにいる レビュー

1.「相棒」制作チームが関わっている
2.個人的に縁のある北海道が舞台
3.大泉洋が主演

 などから、観たくてしょうがなかったのだが、やっとのことでレンタルできた。

 「和製ハードボイルド」+「無国籍アクション」といった趣。

 美女や悪女と探偵が絡む。暴力で死地に追いやられた探偵がよみがえり真相に迫る、という要素はまさにハードボイルド。ただ大泉洋が演じるが故に、ユーモアとシリアスの両面を持って、ちゃらけているかと思えば急にカッコよく見えたりする様はルパン三世のよう。
 一方、ダイヤルの黒電話と携帯電話が同時に登場するとか、全体のおとぎ話感は、ススキノの夜の顔をリアルに描いたというより、リアリティにしばられない無国籍アクションの様相。

 ミステリとしてみた場合、大した新味があるわけではないが、登場人物それぞれの痛みが心にしみる。また大泉洋だけでなくワルの方の高島政信あたりの役作りもなかなか。

 アクションは、劇場映画ならではで、妙にリアルできつめなので、好きな人にはいいけど、家族で一緒に楽しむといった感じではないので要注意。

 続編が出るそうでとても楽しみである。次は劇場で観たいかな。



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芥川賞受賞作 二作を読んで

 受賞会見が話題を呼び、本が売れたという田中慎弥の、「共喰い」を、文藝春秋で読みました。
 会見自体は、彼の個性とかウィットが現れていて、なかなかよいと思ったので作品にも期待していたんですが、端的に結論を言えば「死ぬほどくだらなかった」です。

 彼の生まれ育った街を思わせる、衰えゆく川辺の街の描写などは非常に素晴らしく、確かに彼の文章家としての力量を感じました。また、構成力や小道具の使い方もうまい。

 しかし、描かれている人間やテーマらしきもの、そのとらえ方は、幼稚というかうわっつらというか、もう取り上げて語るだけのものは何もありません。

 芸術の到達点というか目標は、ごく抽象的に言って「美と真実の追求」にある、と僕は考えています。もっとまとめるならやはり「真実の追求」つまり、「美とはなにか」「人間とはなにか」「世界とはなにか」みたいなことにつながっていくわけです。あらゆる学問の源泉「哲学」へと収斂されていきます。

 文学、創作もそうしたものへの「高度に人工的な試み」の一つである、と僕は考えています。

 醜いものや、闇や、悪を描いても構わないのです。それとて追求すれば、「真実の美」あるいは、「美、正義、善、存在」といったものの否定へ、つまりひとつの「真実の追求」へと繋がっていくわけでです。

 浅はかな露悪趣味ほどバカげていて不快でくだらないものはないのです。「共喰い」はまさにそれ。

 いくら腕がよくても、書くべきものとして、こんなものしか持っていないなら、売り物の小説なんて書かないでいただきたい。まだ、お涙頂戴の安っぽいいくらでも量産できるドラマの方が、向いています。

 僕の「共喰い」の評価は、選者の中ではたぶん宮本輝に一番近く、彼よりももっと低いものだと思います。

 円城塔の「道化師の蝶」は、実験的な作品ですが、それほど難解、とも思いませんでした。
 幻想的な物語の体裁をとりながら、物語そのもの、小説、創作、言葉、発想、といったものを、メタフィクション的に語っているのだという解釈で、そんなにずれてないんじゃないか、と思います。

 面白い試みだし、なかなか気の利いた表現や面白いモチーフがあります。でも物語そのものが、やっぱり面白くない。もうちょっと表層のストーリー自体もよくできていて面白く、それが全体として言語論やなんかになっている、というところまで到達していたら、良作でしょうけど、現時点では、実験してみました、成果は、イマイチでした、くらいな感じですね。

 こんな二作が、芥川賞なんですよね。ちょいと苦しい日本の純文学、って感じがします。

芥川賞と石原慎太郎と田中慎弥さん? だっけ

Mixi日記より転載

都知事「駄作のオンパレード」
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=1882463&media_id=2

まあ、石原慎太郎はまだ文学が社会現象になるほどの影響力を持った頃の申し子であって、「太陽の季節」は同時代的には多くの人の心を動かしたわけだから、賞に値するとは思います。でも今はクソほどの価値もない。「処刑の部屋」はけっこう好きですが。

ただ、後世に残るものだけがアートとは言えない。ある時代にのみ輝いて消えるものもそれはそれで美しいと思うわけです。

なのでまあ、僕はそれほど石原慎太郎の評価は低くないんだけど、今に至って他者の文学を批評したり、賞の選考をする資格があるとはとうてい思えませんね。老害の一種です。文学者としては、もう何十年も前に終わってる人ですからね。

やっと自覚ができて退任、よいことです。

それはそうと、表現や娯楽が多様化した今、文学自体に社会をうねらすようなエネルギーは感じられなくなりました。近年の芥川賞作品って、「は? これが賞」て感じのものばかりです。うまいかもしれないけど、全然引力がない。その点けっこう、石原氏に同意できるところもあります。ただそういう時代だから、仕方ないのかもしれない。

今回の受賞者の一人が、授賞式でなかなか面白い暴言を吐いたようですけど、僕はちょっと期待しちゃいますね。文学の世界に、もっと変な人やユニークな人が出てきて、メディアを困惑させるような暴言を吐きまくったら、注目が集まって盛りあがると思います。

どんなジャンルのアーティストも、天才的な人っておよそ普通じゃない感じがありますよね。

村上春樹の作品、大好きですけど、朝早く起きて、午前中仕事して、ワークアウトで健康的な生活、とか聞くと実はちょっとがっかり。まあ、作家は作品で評価されるべきで、作者の人物像なんかどうでもいいっていう観点も、ありますけれど。
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ネットを中心として活動する文章屋です。最近はiPhoneにはまってます。

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